第3編 危険物の物性
危険物の各類の性質
第一類:酸化性固体
- 無色の結晶または白色の粉末が多い。
- 比重は1より大きい
- それ自体、不燃性の固体であるが、加熱,衝撃,摩擦等により分解し、大量に酸素を発生するために、他の可燃物の燃焼を促進する役割をする。
- 可燃物,有機物との混合は、加熱,衝撃,摩擦等により爆発の危険がある。
- アルカリ金属の過酸化物は、水と反応して熱と酸素を発生する。
- 潮解性を有するものは、木材,紙などにしみこむので、乾燥した場合は爆発の危険性がある。
第二類:可燃性固体
- 一般に比重は1より大きく、水に溶けないものが多い。
- 水と作用し、燃焼の際に有毒ガスを発生するものがある。
- 酸,アルカリいずれにも溶けて水素を発生するものがある。
- 強い還元性を有し、空気中で酸化されやすく、燃えやすい物質であり、空気中の水分等で自然発火するものが多い。
- 一般に、酸化剤との接触または混合は、打撃などにより爆発する危険がある。
- 微粉状のものは、空気中で粉じん爆発を起こしやすい。
- 比較的低温で着火しやすい可燃性物質で、燃焼速度が速い。
- それ自体有毒なものがある。
第三類:自然発火性物質および禁水性物質
- それ自体は可燃性のものが多いが、不燃性の物質もあり、常温において固体と液体がある。
- 空気又は水との接触により、直ちに危険性が生じるものがある。
- 発生する可燃性ガスが発熱・発火する。
- 自然発火性のみ,禁水性のみを有している物品もあるが、ほとんどのものは自然発火性および禁水性の両方を有している。
- ハロゲン元素等とは激しく反応し、有毒ガスを発生するものがある。
第四類:引火性液体
- 引火性の液体であり、その蒸気は火気等による引火または爆発の危険がある。
- 蒸気比重が1より大きく、空気より重たい。
- 液比重が1より小さく、水より軽く、水に溶けないものが多い。
- 発火点の低いものがあり、火源がなくても加熱だけで発火するものもある。
- 電気の不良導体が多く、静電気が蓄積されやすい。
第五類:自己反応性物質
- いずれも可燃性の固体または液体である。
- 物質自身が酸素を含有しているものが多く、温度が高くなると不安定になり、酸素供給源がなくても点火源があれば発火・爆発する。
- 比重は1より大きく、一般に燃焼速度が速く、加熱による分解も速い。
- 加熱・衝撃・摩擦等によって発火するものが多い。
- 空気中に長時間放置すると分解が進み、自然発火するものがある。
- 引火性のものがある。 (例:硝酸エチル)
- 金属と作用して爆発性の金属塩を形成するものがある。(例:ピクリン酸)
- 水に溶けないもの,溶けにくいものが多く、吸湿性のものはない。
第六類:酸化性液体
- 酸化性の液体(酸素を含有する強酸化剤)であり、有機物と混ぜるとこれを酸化させ、場合により着火させることがある。
- それ自体不燃性の無機化合物。
- 腐食性があり、その蒸気は有毒。
- 水と接触すると激しく反応し発熱するものがある。(例:過塩素酸)
- 湿った空気との接触により発煙するものがある。(例:硝酸)
類ごとの火災予防
第一類:酸化性固体
- 火気,加熱を避け、衝撃,摩擦を与えない。
- 強酸類,有機物,可燃物との接触をさける。
- 貯蔵は、湿気を避け、容器に密閉して冷所に保存する。
- アルカリ金属の過酸化物は、水との接触をさける。
- 潮解しやすいものは防湿に注意する。
- 容器は、金属,ガラス,ポリウレタン製とする。
- 防爆型照明および換気装置を設置する。
第二類:可燃性固体
- 酸化剤との接触,混合をさける。
- 炎,火花,高温体との接近,加熱をさける。
- 鉄粉,金属粉,Mgは水または酸との接触をさける。
- 換気を十分に行い、防湿して容器を密封し、冷所に貯蔵する。
- 引火性固体は、みだりに蒸気を発生させない。
- 静電気の蓄積を防止し、電気設備は防爆構造とする。
第三類:自然発火性物質および禁水性物質
- 禁水性のものは、水との接触を避けること
- 自然発火性の物品は、空気との接触,炎,火花,高温体との接触,加熱をさける。
- 通風,換気の良い冷所に小分けして貯蔵すること。
- 湿気を避け、容器は密封し破損,腐食に注意すること。
- 保護液に保存する物品は保護液から露出させないようにする。
第四類:引火性液体
- 炎,火花,高温体等との接近,加熱を避け、みだりに蒸気を発生させないこと。
- 容器は、密栓をして冷暗所に貯蔵すること。
- 可燃性蒸気の滞留を防ぐため、蒸気は屋外の高所に排出し十分な換気を行うこと。
- 可燃性蒸気の滞留する場所では、火花を発生する機械器具等を使用しないこと。
- 静電気発生の恐れのある場合は、接地など静電気除去の措置を講じること。
第五類:自己反応性物質
- 火気または加熱などをさけること。
- 通風のよい冷所に貯蔵すること。
- 衝撃,摩擦などをさけること。
- 分解しやすいものは、特に室温,湿気,通風に注意すること。
第六類:酸化性液体
- 有機物,還元剤の混入をさけること。
- 火気,日光の直射はさけること。
- 可燃物,有機物などとの接触をさけ、通風の良い場所で取り扱うこと。
- 貯蔵容器は耐酸性とし密封すること。(過酸化水素を除く)
- 水と反応するものは、接触を避けること。
類ごとの消火方法
第一類:酸化性固体
第一類の危険物の火災を抑制するには、一般的には、大量の水で冷却し酸化性物質を分解温度以下とすればよい。ただし、アルカリ金属の過酸化物には、水と反応して発熱するものがある。
第二類:可燃性固体
第二類の危険物のすべてに有効な消火方法として、乾燥砂の使用による窒息消火がある。
次いで、赤りん,硫黄などに対する注水消火が有効であり、その他性質に応じて泡消火,粉末消火,二酸化炭素消火,ハロゲン化物消火を使用する。
第三類:自然発火性物質および禁水性物質
禁水性物質の消火には、注水消火を避け、乾燥砂などで被覆して消化するか粉末消火剤を用いる。
禁水性以外の物品の消火には、水,強化液,泡等の水系消火薬剤を使用する。
乾燥砂,膨張ひる石,膨張真珠岩は、すべての第三類危険物の消火に使用できる。
第四類:引火性液体
空気遮断による窒息消火。消火薬剤としては、霧状の強化液,泡,ハロゲン化物,二酸化炭素,粉末等。
液比重が1より小さい危険物は水に浮いて火災の範囲を広げるため注水は適当ではない。また、アルコール等水溶液の液体は水に溶けて泡が消滅するため、普通の泡剤ではなく水溶性液体用泡消火薬剤(耐アルコール泡)を使用する。
第五類:自己反応性物質
一般に可燃物と酸素供給源とが共存している物質であるため、窒息消火は効果がない。
大量の水により冷却するか、泡消火剤を用いる
第六類:酸化性液体
すべてに有効なのが乾燥砂。一般には、水や泡消火剤を用いた消化が適切。
二酸化炭素,ハロゲン化物を用いた消火設備,炭酸水素塩類が含まれる消火粉末は不適当。