ISO14000について
1.ISO14000の概要
1-1.ISOとは
ISOとは、国際標準化機構(International Organization for Standardization)のことで、国際標準化機構の略称が、「ISO」で通称アイソ、イソ、アイエスオーと呼ばれています。
ISOは、1947年に設立された世界共通の規格等の設定を行うスイス民法に基づく民間の組織です。
その設立の目的は、「商品とサービスの国際的な交換を容易にし、知識、科学、技術、経済に関する活動において、国際的な交流を助長するため、国際的な規模の標準化とこれに関するさまざまな活動を発展、促進すること」でした。
この目的のもと、ISOではこれまでに約1万件近くもの規格を発行してきており、規格の中には、「製品の規格」と、「経営管理組織や管理制度に関する規 格」があります。現在、「経営管理組織や管理制度に関する規格」はISO9000シリーズ、ISO14000シリーズのみとなっています。
1947年にスタートしたときは参加国は15だったISOも、現在は80カ国以上の正規会員、20カ国以上の通信会員が参加しています。規模の大きな機関ですが、各国の政府や国連などは活動には関わっておらず、まったくの民間機関です。
1-2.ISO9000シリーズとは
ISO9000シリーズは、品質管理及び品質保証に関する一連の規格で、1987年に制定されました。
これらの規格を用いた品質システム審査登録制度は、品質システムに関する世界共通の評価制度として各国で整備されています。
日本では1991年に当該規格がJIS化された後、制度の中核として (財)日本適合性認定協会(JAB)が設立されました。
1-3.ISO14000シリーズとは
1992年6月、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで「環境と開発に関する国連会議“地球サミット(UNCED)”」が開催されました。この会議で「人類 は持続可能な開発の中心にあり、自然と調和しつつ健康で生産的な生活を送る資格を持っている」とする第1原則をはじめとした「リオ宣言(27原則)」なら びに行動計画「アジェンダ21」が採択され、これによって環境問題に地球的規模で取り組むことが国際社会で確認されたことになります。
これを機に、世界各国の産業界で環境管理についての関心が高まり、企業経営者も環境保全と経済発展を同時に達成する環境管理システムの構築を検討し始めま した。とくにヨーロッパでは、1995年4月にEC環境管理・監査規則「EMAS(Community eco-management and audit scheme)」の登録体制が整い、声明書の登録も始まっています。
同年6月、ノルウェーのオスロ市において、第3回TC207環境管理の総会が開催され、環境マネジメントシステムに関する国際規格の最終案 (ISO/DIS14001)が固まり、ISO加盟国の間で投票にかけられた後、1996年9月に国際規格として発行されました。
ISO14000シリーズは環境保全に関連する規格の総称です。内容ごとに「14001」「14004」など様々な規格があります。それを総称してISO14000シリーズと呼んでいます。
1-4.ISO14000の基本概念
14001および14004規格の基本的概念は任意の参加、リスクマネジメント、公平性と透明性にあります。
◎任意参加 : ISO14001環境マネジメントシステム規格は法律ではなく「規制値」のようなもので束縛されることはありません。それぞれの組織にとって最適な独自の仕組みを構築すればよいのです。
◎ リスクマネジメント : 今や人類の大きな懸念材料となっている環境問題は従来の社会システムや経済システム、個人の生活習慣や消費態度に大きな変革を求めております。環境マネジ メントシステムが持っている「リスクマネジメント」の性格を活用してこれまでと違う発想で的確に対応することが必要です。
◎ 公平性と透明性 : ISO14001規格では方針の公開、内部監査、情報の提供による公平性と透明性を大切にしています。自由競争を原則とする中で世界中が同一のルールの下に競争をすべきであるという考え方です。
ISO14001にはいろいろの利用の仕方がありるが環境マネジメントシステムの構築や認証取得は決してゴールではなくスタートラインにたったという認識 が必要です。同システムを「実施」することは単に環境問題にとどまらず、組織の体質改善や生産性の改善にも成果が期待できることにあります。
1-5.JISとの関係
日本の工業標準化制度は工業標準化法のもとに「日本工業規格(JIS)」の制定と「日本工業規格表示制度」の2本柱から構成されています。
IOS14000シリーズが1996年9月1日と10月1日に発行されると、約1ヶ月遅れで10月20日にJISQ14000として制定(JIS化)されました。
【ISO:1996.09.01発行、JIS:1996.10.20制定】
○ISO14001 → JISQ14001
環境マネジメントシステム-仕様及び利用の手引き
○ISO14004 → JISQ14004
環境マネジメントシステム-原則・システム及び支援技法の一般指針
【ISO:1996.10.01発行、JIS:1996.10.20制定】
○ISO14010 → JISQ14010
環境監査の指針-一般原則
○ISO14011 → JISQ14011
環境監査の指針-監査手順-環境マネジメントシステムの監査
○ISO14012 → JISQ14012
環境監査の指針-環境監査員のための資格基準
2.ISO14000の内容
2-1.ISO14000の体系
環境管理 | |
---|---|
ISO14004 | 一般ガイドライン |
ISO14001 | 規格 |
環境監査 | |
ISO14010 | 一般原則 |
ISO14011-1 | 管理システム監査 |
ISO14011-2 | 適合監査 |
ISO14011-3 | 声明書監査 |
ISO14012 | 監査資格 |
ISO14013 | 管理監査プログラム |
ISO14014 | 初期評価 |
ISO14015 | サイトアセスメント |
環境ラベル | |
ISO14020 | 一般原則 |
ISO14021 | 自己宣言 |
ISO14022 | シンボル |
ISO14023 | 検査と検証 |
ISO14024 | ラベルの認証プログラム |
環境パフォーマンス評価 | |
ISO14031 | 一般手法 |
ISO14032 | 具体的な指針 |
LCA (環境ライフサイクルアセスメント) | |
ISO14040 | 一般原則 |
ISO14041 | 在庫分析 |
ISO14042-43 | アセスメント |
用語と定義 | |
ISO14050 | 用語 |
2-2.SC1:環境マネジメントシステム (EMS)
環境保全に取り組むとき社内のシステムのあり方を定めた規格です。
PLAN(計画)、DO(実施・運用)、CHECK(監視・是正)、ACTION(見直し・改善)からなっており、システムの継続的な改善(スパイラルアップ)が要求されています。永続的なシステム改善で、環境への負荷削減実績(パフォーマンス)を向上させていく仕組みです。
この活動は企業の自主的かつトップダウンの取組みであり、そのためには、経営者の意識、社員の環境教育が大切で、ひとりひとりが自らの活動の環境への影響に「自覚」を持つ事が要求されています。また、組織の責任と権限の明確化、文書類の整備なども従来のわが国の企業の多くで曖昧な部分、不得意な内容で構成されていますが、日本の企業もグローバルスタンダード化の波に乗り遅れないためには、企業体質の改善を求められています。
2-3.SC2:環境監査
自分の会社の取組みについて環境監査するときの原則や監査員の資格などを定めた規格です。
EMSのチェック部分に当たる要素で、企業の環境保全活動が適切に実施され、その管理レベルが継続的に維持・向上しているかを確認する事です。
EMSが効果的に機能するかどうかはこの内部監査如何にかかっています。
2-4.SC3:環境ラベル (エコラベル)
環境ラベルの原則などが定められています。
タイプ | 主な特徴 | |
---|---|---|
提供したデータなどの情報を第三者機関が認証 | タイプI (JIS Q 14024) |
|
タイプIII (TR/Q 0003) (ISO/TR 14025) |
|
|
認証の必要がない自己宣言 | タイプII (JIS Q 14021) (ISO 14021) |
|
>>リンク:環境省 環境ラベル等データベース
http://www.env.go.jp/policy/hozen/green/ecolabel/f01.html
2-5.SC4:環境パフォーマンス評価
環境などに関してその企業がつくった基準の達成度を測って分析し、報告するプロセスを規格化したものです。
事業者が事業活動についての環境配慮を進めていくに当たっては、自らが発生させている環境への負荷やそれに係る対策の成果(環境パフォーマンス)を的確に把握し、評価していくことが重要です。この環境パフォーマンスの把握、評価の際に必要となるものが、環境パフォーマンスについての情報を提供する指標、すなわち、「環境パフォーマンス指標」 です。事業者が環境保全上適切な環境パフォーマンス指標を選択できてはじめて、実際に意義のある環境保全活動を行うことが可能となります。さらに、環境パ フォーマンス指標は、環境報告書等に盛り込まれることにより、外部の利害関係者等に対して環境情報を提供するという意義があります。
2-6.SC5:環境ライフサイクルアセスメント (LCA)
原料から製品が生まれ、使われ、捨てられるまで、つまり「製品の一生」の間に環境に与える影響の調査、それを最小限に抑える方法などのガイドラインです。
>>リンク:日本LCA学会
http://ilcaj.sntt.or.jp/
2-7.用語と定義
文字どおり、環境保全と環境監査の用語がまとめられたものです。
3.ISO14001取得のメリット/デメリットの概要
3-1.ISO14001取得のメリット
1. 取引上の用件充足
ISO14001取得の動機の最大の理由でしょう。欧州市場などに直接、間接に関わる製品のメーカーが取引先から取得を要請されるケースが多いためです。 自社の監査チームを日本の取引企業の工場に派遣して環境対策をチェックし始めた企業も増えています。資材調達の入札資格にISO14001を加える欧州企 業も多くなってきています。
2. 企業イメージの向上
取引上は認証取得を直接求められなくても、環境装置産業など環境へ貢献を売り物にした企業が、環境ビジネス推進の一種の「パスポート」としてISO14001取得を目指すケースもあります。
また、企業イメージを改善し、より高いステータス、社会的認知度を求めるために取得を狙う場合もあります。取引上は認証取得を直接求められなくても、環境装置産業など環境へ貢献を売り物にした企業が、環境ビジネス推進の一種の「パスポート」としてISO14001取得を目指すケースもあります。
また、企業イメージを改善し、より高いステータス、社会的認知度を求めるために取得を狙う場合も。
3. マーケティング、広告宣伝
2の延長線上にあるメリット。ISO14001を取得していることで、企業の信用度が高まり、営業上有利になる可能性がある業種が環境関連の分野では少なくありません。
4. 環境影響・環境関連法規制の把握・遵守、環境リスクの管理
環境に負荷の大きい事業を営む会社が、その環境影響や関連する環境関連法規制を適切に把握し、法規制を遵守する体制を作るために、ISO14001で定めるEMS構築を進めるケースもあります。
しかし、地球規模及び地域の環境問題がますます深刻化することは確実視されるため、あらゆる業種において環境リスクを考えた経営を行うためにには非常に有効なツールです。
5. コストの削減
EMSを構築していく過程は、コストがかかることばかりではありません。事業活動の各分野での環境側面 を把握し、環境影響の低減を目指す過程で、エネルギーや原材料の使用量や廃棄物処理費用を減らすことができます。
6. 経営管理体制の改善促進
環境影響ひいてはリスクなどのマネジメントについて、継続的改善を行っていける体制ができます。これは環境以外のマネジメント技法の向上にも役立てることができます。
3-2.ISO14001取得のデメリット
1. 資金の負担
ISO14001取得に伴い、コンサルティング費用,審査費用が必要となります。また、定期的な審査が必要となる為、定期審査費用,更新費用も必要となります。
2. 作成負荷の増大
ISO14001取得に関し、文書類の作成が必要となります。この文書作成のために担当者の人的負担が発生(増大)します。
3. 運用負荷の発生
ISO14001を取得すると、担当者や従業員の記録を作成する作業が発生します。作業後、自社で定めた規定に従い記録を残していかなければなりません。
4.ISO14000関係リンク集
4-1.ISO14000関係リンク集
1. JAB 財団法人 日本適合性認定協会
http://www.jab.or.jp/
ISO14001統計データ (最新の統計データがわかります。)
http://www.jab.or.jp/cgi-bin/jab_statistic_14_j.cgi
2. JEMAI 社団法人 産業環境管理協会
http://www.jemai.or.jp/JEMAI_DYNAMIC/index.cfm
3. ISO World
http://www.ecology.or.jp/isoworld/index.htm
4. 環境省
http://www.env.go.jp/
環境マネジメントシステム
http://www.env.go.jp/policy/j-hiroba/MNG/index.html